全国にファン多数!食べ手の健康を想って作られた「四万十いきいき納豆」 ー 取材vol.4

納豆四万十健康食品無農薬

四万十町東又地区にある「納豆クラブ」は、農家の島岡和子さんが起点となり立ち上げたグループで80〜90歳のメンバーが中心。

何度も失敗を重ねながら試行錯誤の末、やっとの思いで完成した納豆だが、納豆の食習慣のない地元での販売はなかなかうまくいかず。

しかし本場「水戸」の道の駅での販売を皮切りに、「四万十いきいき納豆」のファンが全国に広がる。


全国的にみて納豆の消費量が少ない高知県には、リピーター続出のご当地納豆「四万十いきいき納豆」があります。
四万十町産大豆100%の「四万十いきいき納豆」は、地元農家の女性グループ「納豆クラブ」が作った手作り納豆で、黒大豆入りと白大豆の2パック入り。黒大豆は無農薬栽培です。

メンバー80歳超え!四万十町東又地区にある「納豆クラブ」


四万十町東又地区にある「納豆クラブ」は、代表で農家の島岡和子さんが起点となり立ち上げたグループで80〜90歳のメンバーが中心。作業場ではメンバー同士、和気あいあいと納豆づくりに勤しんでいます。

和子さん:
私らは納豆づくりが生きがい。金儲けよりもやりがいを大事にしてます。私らのグループは80歳を定年にしていたんですが、みんな80歳を超えてしもうた(笑)。

和子さん:
高知県の公聴会に豆腐作りの講習に行ったり製造も試みたけど、結局日持ちのする納豆へ行きついたがよ。けんど、高知には納豆を食べる食習慣がなかったけんね。美味しいのか、上手くできたのかも分からん。とにかく試行錯誤よ。


和子さんは、全国各地にある女性農業者グループの高知県の会長をやっていた頃の人脈を駆使してメンバーを募り、「納豆クラブ」を立ち上げたそう。

納豆を食べる習慣のない高知で、どのように納豆づくりを始めたのでしょうか?

和子さん:
岡山県にも女性農業者グループがあって、岡山県邑久町(おくちょう)にお住まいの奥さんに個人的に教わりました。岡山と高知を行き来しながら交流を重ねました。奥さんが高知に来たときには、さわち料理を作っておもてなししたことよ。

試作のデータを元に試行錯誤の日々、最適な調理法を模索

初めての納豆づくりは毎日が試行錯誤。一つ一つ試作のデータを取りながら、最適な調理方法を模索していったそうです。

和子さん:
大豆を炊く時間も10分と15分とでは質感が変わる。大豆の産地と収穫時期によっても煮え方が違う。加熱して15分で蒸気が出だしたら、大きな火を消して種火にした後15分加熱。その後、種火を止めて、また余熱で15分。これが基本。大豆によっては13分で親火を止めないといかん時もある。あるいは16分煮る時もある。大豆によって全部違うから、今も毎回調整しています。

納豆づくりは、まず和子さんが大豆の状態を確認し、メンバーに指示を出すそうです。

和子さん:
大豆の目利きは私でなけりゃ分からん。それをどう説明していいか分からんけど、『この豆は〇〇分でしてね』と伝えています。温もった釜を使うときには時間を早めたり、ちょっとした工夫がいる。それと水のひたし方も、真夏の気温の高い時は水へ浸けていると発酵して泡がいっぱい出ちゅうわね。そんな時は時間はあまりかけたらいかんしね。そこは1分、2分の違いやけんどね、その時々の状況でかえゆうね。大豆は生き物ですもんね。


「四万十いきいき納豆」は全て手作りで仕上げられています。一体、どのような工程で作られているのでしょうか?

和子さん:
納豆は前の日に大豆を洗って、通常は13時間、冬場は15時間、水に浸けてふやかします。明くる日、圧力釜で炊いて。手で触ったら潰れるくらいの硬くなく柔らか過ぎないくらいの丁度の大豆に炊く。煮過ぎたらべっちゃべちゃになるきね(笑) その後、50gずつの容器に入れて発酵機で11時間発酵させます。明くる日、商品としてパッキングして完成です。

やっとの思いで完成した納豆、しかし地元では売れずに不安の日々


何度も失敗を重ねながら試行錯誤の末、やっとの思いで完成した納豆ですが、納豆の食習慣のない地域での販売は苦戦したのではないでしょうか?

和子さん:
売り始めは大変で、役場や公共団体へ押し売りしよった。イベントに出店して『試しに食べてみて』と言うても、『こんな臭いの』言うて受け入れられなかった。最初は、とにかく押し売りやったね(笑)。

販売を開始するも、馴染みのない納豆を美味しいと思ってもらえるか不安だったそう。そんなある日、気持ちが高揚する出来事があったと言います。

納豆の本場に認められ、水戸の道の駅で販売が決定

和子さん:
道の駅で販売していた納豆を食した県外のお客さんから電話があってね。『あなたの納豆は本当に美味しい。しばらく送ってくれませんか?』と言うてね。こりゃ嬉しいと思うて、『ハイハイどちら様でしょうか?』と聞いたら『水戸です』と。『それはたまるか。納豆の本場で、そんな恥ずかしいことはできますもんか』と言うたけんど、『自信を持ってください。まさに納豆のトロです』と言うてくださってね。それから自信ができて、偉そうになったわけよ(笑)。


少しずつ販売先も増え、「四万十いきいき納豆」のファンが全国に広がっていきました。ファンが増えて嬉しい反面、お客さんからいただく要望やクレームも増えていったそうです。

和子さん:
お客さんにお医者さんのグループ(特定非営利活動法人土といのち)がおるがやけど、『タレは信頼できんき、タレを入れないでください』と言うがよ。ところが、お婆が作りゆうき、間違ってタレが入ったり、入らなかったりするのよね。『ある店舗ではタレが入っていません』とクレームが来る。『片一方ではタレが入っちゅう』とクレームが来る。それに対して私は『除けたらすむ話やか。除けなさいや』と。この調子で20年(笑) ほんと好き勝手、わがまま勝手でね。頭は下げることはないとに、おうちゃくな商売してます(笑)。

農薬や化学肥料を使わず、一番美味しいものを作るのが農民の基本

和子さんは農家として、人として大切にしている信念があると言います。

和子さん:
食事というのは、人の命を育て、養うものだと考えています。だから『一番安全で、美味しくなけりゃいかん』というのが私たちの一番のバックボーンやけんね。農薬や化学肥料を使わず、一番美味しいものを作るのが農民の基本。

農民の良心というのは、いつまでも伝え続けていきたい。
『“本物”を食べていただきたい』というのが私の信念です。

もう一つは、『富というのはすべて分かち合うもの。独り占めするもんじゃない』ということ。欲を捨てたら与えられる。第一、こんなに長生きするとは思わんかった。もう85歳よ(笑) 85歳になって一番の財産は、良い友達を得たこと。お金ではまったく満たされない。

与えたら与えていただける。それが本当に豊かで、幸せを感じると言います。

「四万十いきいき納豆」は、4人体制で毎週木曜、金曜の2日間に納豆づくりを行っています。 2日で170セット(2パック入り)、1ヶ月で680セットのみ出荷されています。年齢的にも今以上に量産することは考えていないそう。まさに「幻の納豆」です。

「四万十いきいき納豆」を一口食べれば、思わず笑顔がこぼれて“いきいき”すること請け合いです!